2023年8月19日(土)~8月27日(日)までブダペスト(ハンガリー)にて開催される世界陸上の代表選手について、日本陸連より発表がありました。
総勢63名となりましたが、この記事ではその内のトラック&フィールドの各種目代表選手について、有効期間直前の順位変動によるドラマや、多数の参加資格者がいた男子110mHや女子100mHの選考明暗など、一覧と共にご紹介します!
トラック&フィールド各種目の代表選手一覧・直前ランキング比較あり
ランキングは、WAの「Road to Budapest 23」で確認しています。
ターゲットナンバーとは、ワールドランキング(WR)がこのナンバー以内であれば参加資格があるという数字です。
選手名の前の数字は日本選手権の順位です。日本陸連の選考条件は、選考会である日本選手権の結果の優先順位が高いので表記しています。
記録有効期限の7/30直前の状況変化がわかるよう、7/21時点のWRと比較をしているので、注目してみてください!
赤色が代表選手です。
種目 | 参加標準記録 | TN | 参加標準記録突破での代表者 | WRでの代表者()内はWR*7/21からの変化 |
---|---|---|---|---|
男子 | ||||
100m | 10.00 | 48 | 1.坂井隆一郎(28→33) 2.栁田大輝(27→34) 8.サニブラウン・ハキーム(52→46) | |
200m | 20.16 | 48 | 1.鵜澤飛羽(29→30) 7.上山紘輝(29→47) 5.飯塚翔太(47→圏外) | |
400m | 45.00 | 48 | 3.佐藤拳太郎(45.00) | 1.中島佑気ジョセフ(32→39) 2.佐藤風雅(39) |
800m | 1.44.70 | 56 | ||
1500m | 3.34.20 | 56 | ||
5000m | 13.07.00 | 42 | 1.遠藤日向(41→33) 2.塩尻和也(40→36) | |
10000m | 27.10.00 | 27 | 田澤廉*エリアチャンピオン | |
3000mSC | 8.15.00 | 36 | 1.三浦龍司(8.09.91) | 7.青木涼真(34→26) 2.砂田晟弥(33→圏外) |
110mH | 13.28 | 40 | 1.泉谷駿介(13.04) 2.高山峻野(13.10) 決勝DNF 野本周成(13.20) 欠場 村竹ラシッド(13.18) | 3.横地大雅(36→36) |
400mH | 48.70 | 40 | 3.児玉悠作(30→28) 8.岸本鷹幸(37→圏外) 準決敗退 黒川和樹(圏外→38) | |
走高跳 | 2m32 | 36 | 1.赤松諒一(13→14) 3.真野友博(16→17) 2.長谷川直人(23→25) | |
棒高跳 | 5m81 | 36 | ||
走幅跳 | 8m25 | 36 | 10.吉田弘道(8m26) | 1.城山正太郎(29→33) 2.橋岡優輝(27→30) |
三段跳 | 17m20 | 36 | 1.池畠旭佳瑠(圏外→35) | |
砲丸投 | 21m40 | 36 | ||
円盤投 | 67m00 | 36 | ||
ハンマー投 | 78m00 | 36 | ||
やり投 | 85m20 | 36 | 1.ディーン元気(13→12) 3.﨑山雄太(23→30) 2.新井涼平(27→圏外) 10.小椋健司(30→圏外) | |
十種競技 | 8460点 | 24 | 6.丸山優真(23) | |
女子 | ||||
100m | 11.08 | 48 | ||
200m | 22.60 | 48 | ||
400m | 51.00 | 48 | ||
800m | 1.59.80 | 56 | ||
1500m | 4.03.50 | 56 | 1.田中希実(34→35) 2.後藤夢(44→47) | |
5000m | 14.57.00 | 42 | 1.田中希実(14:53.60) | 8.山本有真(31→35) 21.廣中璃梨佳(42→圏外) |
10000m | 30.40.00 | 27 | 1.廣中璃梨佳(30:39.71) | |
3000mSC | 9.23.00 | 36 | ||
100mH | 12.78 | 40 | 4.福部真子(12.73) | 1.寺田明日香(25→26) 2.青木益未(28→29) 3.田中佑美(33→33) |
400mH | 54.90 | 40 | ||
走高跳 | 1m97 | 36 | ||
棒高跳 | 4m71 | 36 | ||
走幅跳 | 6m85 | 36 | 1.秦澄美鈴(6m97) | |
三段跳 | 14m52 | 36 | 1.森本麻里子(16→18) 2.高島真織子(29→圏外) | |
砲丸投 | 18m80 | 36 | ||
円盤投 | 64m20 | 36 | ||
ハンマー投 | 73m60 | 36 | ||
やり投 | 63m80 | 36 | 2.北口榛花(67.04) | 1.斉藤真理菜(14→16) 3.上田百寧(27→33) |
七種競技 | 6480点 | 25 |
2週間前までは圏内だったのに…という選手もいるね(泣)
参考記録有効期間直前に世界中で多くの大会があって、どの選手も出場をかけて全力で挑むからね
でも逆転で滑り込んだ選手もいるわよ!
代表選考のポイントについて解説していきます。
代表選出まであと一歩だった選手たち
ターゲットナンバーまでのポイント差
圏外になってしまったいずれの選手も、ターゲットナンバーまでは非常にわずかな差でした。
- 男子3000mSC 砂田晟弥選手 ⇨ 6ポイント
- 男子400mH 岸本鷹幸選手 ⇨ 4ポイント
- 男子やり投 小椋健司選手 ・新井涼平選手⇨ 0ポイント
- 女子5000m 廣中璃梨佳選手 ⇨ 8ポイント
- 女子三段跳 高島真織子選手 ⇨ 2ポイント
やり投げ両選手の0ポイントって何?と思いますが、Road to Budapest 23 を確認すると、次のようになっています。
小椋健司選手・新井涼平選手二人のポイントは、1143pで36位のインドの選手と並んでいます。
どういう基準で優先順位がつけられているのか分かりませんが、残念ながら圏外となりました。
ただ今後、各国の出場選手の変動によっては繰り上がっての追加招集となるかも知れませんね!
※8/8追記 小椋健司選手が追加で代表となりました!
いずれの種目も1000ポイント以上での競い合いの中ですから、差は本当にわずか。厳しい世界です。
日本人同士でも、男子400mHでは直前での逆転ドラマがありました。
男子400mHは最後に黒川選手と岸本選手の明暗が分かれる
男子400mHは、日本選手権で3位の児玉選手の他に、ベテランながら日本選手権8位の岸本選手が、7/21時点ではWR37位で、ギリギリですがターゲットナンバー圏内に入っていました。
一方、東京オリンピックにも出場し、男子400mHのエースと言える黒川選手は今シーズン調子が上がらず、日本選手権も準決勝で敗退。ランキング圏外でした。
その二人が、出場権をかけて7/29(土)の田島記念陸上大会に出場。
タイムレース決勝の結果は、黒川選手はが50.11の1位。岸本選手は、52.56と下位に沈みます。
最初の組の5レーンが岸本選手、7レーンが黒川選手ですが、岸本選手は明らかに動きが重く、ゴール後に倒れて医務室に運ばれたそうなので、熱中症など体調が悪かったのかと思います。
黒川選手は1149ポイントを獲得してランキングを上げ、代表に滑り込みました。
世陸では、復調して活躍してもらいたいですね!
※8/8追記 岸本鷹幸選手も追加で代表となりました!
次は、参加資格のある選手が4人以上いて、選考結果が一般的に見ると驚く結果となった種目について解説します。
男子110mHと女子100mHは参加標準突破の村竹・野本・福部が選ばれず
一般の感覚で一番不思議なのが、この男子110mHと女子100mHでしょう。
参加標準記録を突破していて、尚且つWRも上位の選手が選ばれず、下位の選手が代表になるのは、違和感を持たれるのも理解できます。
これは、日本陸連独自の選考条件によるものです。一部抜粋しますが、選考会である「日本選手権」の結果が最重要となっています。
【選考条件】
一部抜粋:日本陸上競技連盟HP
5)日本選手権 3 位以内の成績を収めた競技者であって、参加標準記録有効期間内に参加標準記録
を満たした競技者。ただし、下記の項目(数字の若い順に優先)により優先順位を定める。
① 日本選手権の順位
② 参加標準記録有効期間内の記録
③ 上記①~②の基準で優劣がつかない場合は、2023 年度に開催される国内外主要競技会
(日本グランプ リシリーズ等)の成績
6)基準ワールドランキングにより本大会の参加資格を得た者で、日本選手権 3 位以内の成績を収
めた競技者。ただし、下記の項目(数字の若い順に優先)により優先順位を定める。
① 日本選手権の順位
② 基準ワールドランキングの順位
③ 参加標準記録有効期間内の記録
④ 上記①~③の基準で優劣がつかない場合は、
項目数字の若い順に優先されますが、とにかく
のです。
選手もこの条件はわかっているので、日本選手権は非常に緊張感のある大会となります。
この条件を念頭に、二つの種目について見ていきましょう。
男子110mHは日本選手権3位の横地大雅選手が代表に!
わかりやすくするため、内定している泉谷選手・高山選手以外の3人について、日本選手権の結果を以下にまとめます。
- 村竹選手 ⇨ 4/29の織田記念陸上でのケガにより欠場
- 野本選手 ⇨ 決勝の1台目で転倒し棄権
- 横地選手 ⇨ 3位!
横地選手がこの時点で最有力なのは一目瞭然です。
ただし、ワールドランキング圏内でなければ参加資格はありません。
横地選手のランキング次第でしたが、見事Qualified by World Rankingsとなり、日本陸連【選考条件】(6)により、代表決定です!
横地選手がWR圏外になった場合は、日本選手権の順位が村竹選手より上位の野本選手が代表でした!
村竹選手は欠場だったからね
7/29に行われた「アスリートナイトゲームズ福井」では、村竹選手が11.18、野本選手が11.20(共に風+0.9)と好記録だったので残念ですが、パリ五輪の標準記録も突破したので、五輪での活躍に期待です!
横地選手も同大会で11.33と好調をキープしていますので、世陸で活躍してくれると思います!
女子100mHは標準記録突破&日本記録保持者&WR日本人トップの福部選手が落選
男子110mH以上にモヤモヤするのが、女子100mHです。
各選手の実力が拮抗しているために起こる結果ですが、こちらもわかりやすく日本選手権の結果をまとめます。
- 寺田選手 ⇨ 1位
- 青木選手 ⇨ 2位
- 田中選手 ⇨ 3位
- 福部選手 ⇨ 4位
上記の4選手の中でWRが一番下位だった田中選手次第でしたが、無事にターゲットナンバー圏内で参加資格を得たため、日本陸連【選考条件】(6)の
基準ワールドランキングにより本大会の参加資格を得た者で、日本選手権 3 位以内の成績を収
めた競技者
にあたり、寺田・青木・田中選手が世陸の代表となりました。
福部選手ほどの選手が代表となれないのは残念ですが、それだけ日本の女子100mHがレベルアップしているということ。
代表となった3選手には世陸で大いに活躍して欲しいですね!
福部選手は4位となった日本選手権決勝のリザルト掲示で一瞬1位と表示されるなど、心をかき乱される状況もありましたが、既に明るく前を向いているようです。
「12秒5切りとパリ五輪ファイナル」への挑戦を応援していきましょう!
8/8追記:日本陸連より追加発表がありました!
トラック&フィールドは13名の選手が追加で代表に
男子200m | 飯塚翔太 |
男子400mH | 岸本鷹幸 |
男子3000mSC | 砂田晟弥 |
棒高跳 | 柄澤智哉 |
やり投 | 小椋健司 |
女子100m | 君嶋愛梨沙 |
女子200m | 鶴田玲美 |
女子5000m | 廣中璃梨佳選手 |
女子10000m | 五島莉乃 |
女子400mH | 宇都宮絵莉・山本亜美 |
女子三段跳 | 高島真織子 |
女子円盤投 | 梅野倖子 |
追加選手については、日本陸連の選考条件で、次のように記載があります。
9)エントリー締め切り後に WA から追加による参加資格が認められた競技者。
引用抜粋:日本陸上競技連盟HP
記載のとおり、WA(世界陸連)の基準で資格を得た選手が追加となりますが、その基準については日本陸連もよくわからないそうです。
その基準によって、またしてもドラマがありました。
同ポイントの男子やり投は日本選手権2位の新井選手でなく小椋選手が選出
- もしも、新居選手・小椋選手ともに同ポイントでワールドランキング内だったら
その場合は、3人目は日本選手権で2位だった新井選手でした。
ランキング内の場合は日本陸連の選考条件が適用されるからです。
今回は36位のインドの選手と同ポイントでありながら圏外となったため、日本陸連の条件は適用されずWAが「参加資格あり」とした小椋選手が代表となりました。
紙一重だった新井選手は残念だにゃ(泣)
小椋選手は7/29のAthlete Night Games in FUKUIで 80mオーバーの投擲で優勝したのが大きかったわね!
まとめ
ブダペスト世陸のトラック&フィールド代表選手について、一覧とともに、選考理由や明暗を分けたドラマについてお伝えしました!
でもブダペスト世陸出場という意味では「暗」でも、来年のパリ五輪を照準にすると「明」かもしれません。選ばれた選手はもちろんですが、落選した選手たちの今後のレースも応援していきましょう!