2023年7月26に行われたダイヤモンドリーグロンドン大会 4×100mリレーで、日本は37.80の今季世界最高タイ記録をマークし、ブダペスト世陸の出場をほぼ手中に収めました。
この記事では、新生リレー侍誕生までの舞台裏に迫ります!
世陸出場に向けてリレーチームが置かれていた状況
DLロンドン大会前まで、日本は世陸への出場は難しい状況でした。その状況について整理してみます。
ブダペスト世陸/リレーの参加資格条件
リレーについては、個人種目とは異なった資格条件となっています。
オレゴン世陸上位8ヵ国をおさらいします。
- カナダ
- アメリカ
- イギリス
- ジャマイカ
- ガーナ
- 南アフリカ
- ブラジル
- フランス
日本は予選を38秒78で走り組4着となりましたが、2走から3走で、テイクオーバーゾーン内でバトン受け渡しが完了しなかったことにより、失格となりました。
ブダペスト世陸の参加資格を得るには、ワールドランキングでの勝負となります。
日本が参加資格を得るための最低条件
DLロンドン大会前のワールドランキング上位8ヵ国が次のとおりです。
1 | ドイツ | 37.97 |
2 | イタリア | 38.04 |
3 | ポーランド | 38.15 |
4 | オランダ | 38.25 |
5 | ケニア | 38.26 |
6 | トリニダード・トバゴ | 38.30 |
7 | スイス | 38.36 |
8 | オーストラリア | 38.50 |
日本は、最低条件として、38.49を出さなくてはなりません。
安全圏ということでは、38秒台の前半では走りたいところです。
日本チームの参加資格獲得へ向けたプラン
6月29日にDLロンドンへ派遣する代表5人を日本陸連が発表
日本陸連は、次の5人を代表メンバーに選出しました。
氏名 | PB | SB | 年齢 | 所属 |
---|---|---|---|---|
坂井隆一郎 | 10.02 | 10.08 | 25 | 大阪ガス |
栁田大輝 | 10.13 | 10.13 | 19 | 東洋大学 |
小池祐貴 | 9.98 | 10.11 | 28 | 住友電工 |
水久保漱至 | 10.14 | 10.20 | 24 | 第一酒造 |
本郷汰樹 | 10.12 | 10.18 | 24 | オノテック |
*PB=パーソナルベスト *SB=シーズンベスト
このメンバーは、上から順番に日本選手権の1位から5位の選手です。
5人が選ばれた理由【推察】
スタートが抜群に良い坂井選手は1走として欠かせないですし、栁田選手は選出後の7月のアジア選手権で10.02と自己ベストを更新しているように、今シーズン伸び盛りですので、エースと言えます。
ではあとに続くメンバーをどうするか、は難しい判断だったと思われます。
日本記録メンバーのサニブラウン選手はどうなのかにゃ?
今シーズンは調子が上がっていなかったのと、アメリカに拠点を置いているから、合宿や練習への参加が難しいからね。
今シーズンの国内主要大会は、大会ごとに上位選手がコロコロ変わり、決め手が無いのです。
【4/29 織田記念陸上】風+0.5 ※日本人選手順位
1.栁田大輝(10.25)
3.東田旺洋(10.26)
4.竹田一平(10.27)
【5/21 セイコーゴールデングランプリ】風+0.4 ※日本人選手順位
3.坂井隆一郎(10.10)
4.小池祐貴(10.11)
6.本郷汰樹(10.18)
7.栁田大輝(10.19)
【6/25 布勢スプリント】風+1.7
1.鈴木涼太(10.17)
2.多田修平(10.21)
3.成島陽紀(10.25)
この状況を考えると、ブダペスト世界陸上の選考会でもある日本選手権の順位で決めたのは、妥当でしょう。
この5人で世陸の出場権を獲得するべく、DLロンドン大会までに練習や合宿を行ったと思われます。
直前で上山紘輝選手を追加招集!
急な展開の理由は?
日本陸連は、DLロンドン大会の前日である2023年7月22日(土)に、200mの選手である上山選手を追加招集したことを発表しました。
この急な招集から考えられることは、単純にただ一つです。
切れないことはなかったかも知れませんが、安全圏のタイムが出なかったのだと思います。
1走~3走はほぼ固定で練習していたと思われるので、4走予定の本郷選手、水久保選手の調子が上がらず、DLロンドン大会が最後のチャンスであることから、思い切って追加招集という決断をしたのでしょう。
上山紘輝選手が選ばれた理由
上山選手は200mの選手です。自己ベストは2022年オレゴン世界陸上予選でマークした20.26。これは、日本歴代10位の記録です。
ただ、今シーズンに関して言えば、5月3日の静岡国際では20.32をマークするも追い風2.6mで参考記録ですし、5月7日の木南記念は20.87(+0.6)で4位、6月の日本選手権でも20.94(-0.2)で9位と振るいませんでした。
今シーズンの男子200mで勢いがあるのは、日本選手権も制し、7月のアジア選手権で20.23(日本歴代8位タイ)で優勝した、鵜澤飛羽選手であることは、間違いありません。
じゃあ、なんで鵜澤選手を呼ばなかったのかにゃ?
そうよね。理由を考えてみたよ。
- 上山選手は、オレゴン世陸の400mリレーで代表経験がある。
これは大きい。急な招集だったため、経験のある選手のほうが対応できると考えたと思います。 - 直接コンディションを聞き、上山選手が好調との情報を得た。
東京オリンピック後の2021年から、日本代表のリレーコーチとして、北京オリンピック男子400mリレー銀メダリストの、高平慎士さんが就任しています。
高平さんは元200mの選手であり、現役選手たちとも年齢も近く、選手のコンディションに関してリアルな情報を聞き出せるという面はあるでしょう。
そうして選ばれた上山選手は、大会当日、4走を任されます。
37秒80!今季世界最高タイ!世陸出場をほぼ確実に
振り返ってみましょう。
日本は4レーン。
坂井隆一郎選手→栁田大輝選手→小池祐貴選手→上山紘輝選手です。
特筆すべきは、3走から4走へのバトンパス。
上山選手が出た時、あ、ちょっと離れてる!と筆者は思いました。しかし、上山選手は躊躇せず加速します。
3走まではライバルのイギリスと並んでいましたが、このバトンパスでのアドバンテージが、そのままゴールの差となりました。
私、ちょっとほんとに上山選手すごい!って感動したのよ
速かったから?
それだけじゃなくて、勇気に。
上山選手は、オレゴン世陸の時に3走だったんだけど、2走の鈴木涼太選手からのバトンが届かなくて、ゾーン内で受けられず失格になったの。
あの時の失敗で弱気になることなく、小池選手を信じて加速した上山選手、アッパレです!
そして、きっちり渡した小池選手も、流石のベテランの技ですね!
何より、
です。
まとめ
ブダペスト世界陸上をほぼ確実にした、DLロンドン大会、男子4×100mリレーの舞台裏についての推察でした。
ブダペスト世陸のメンバーはまだわかりません。
今季調子の上がらなかったサニブラウン・ハキーム選手も、2023年7月20日に行われたスイスの大会で、10.09(+0.3)で4位に入りポイントを上げ、男子100m出場の可能性が見えてきました。
また、200mの鵜澤飛羽選手も非常に好調なので、全体練習の機会があれば、メンバー入りの可能性もあります。
今回出場の機会のなかった、水久保選手や本郷選手も調子を上げて来るかもしれません。
ただ。良い結果が出たメンバーから変えるのは勇気がいる!
誰が選ばれたとしても、フレッシュなチーム。新生リレー侍を応援しましょう!